Hi-Fi SRP
Analytical Approximation of High-Fidelity Solar Radiation Pressure
太陽輻射圧(Solar Radiation Pressure, SRP)は,太陽光(光子,フォトン)が宇宙機表面に衝突,反射することによって発生する力です.従来は外乱として扱われてきましたが,ミッションの高度化によりSRPを積極的に活用する研究が多く行われるようになりました.例えば,ソーラーセイルと呼ばれる宇宙機は薄く大きな膜面を展開することで,SRPを主たる推進力として利用します.また,はやぶさ2のような深宇宙探査機もSRPを用いた姿勢安定化が行われています.
先に述べたようにSRPは光の衝突と反射によって発生する力であるため,反射分布によって力の方向と大きさが変わります.そのため,実際の物理現象に忠実な光の反射分布を用いてSRPを計算することが,SRPを活用した宇宙機の制御に重要になります.従来は単純な反射モデルに基づくSRPが用いられてきました.しかし,実際の反射現象は複雑で,上図左のような等方性反射だけでなく,材質によっては異方性反射特性(上図右)を持ちます.そのような反射モデルは存在するものの,それをSRPに適用すると解析的にSRP計算ができなくなる問題があります.そこで,実際の物理現象に近い反射モデルをSRPに適用し,さらにそのSRPの近似解析解を導出しました [1].これによりSRPを活用する宇宙機の制御則に陽に組み込むことが可能になり,高精度な軌道・姿勢制御へ寄与します.
Attitude Dynamics and Stability Analysis
上記の高忠実なSRPを用いることで,姿勢安定性が従来のSRPモデルからどの程度変化するかを研究しています [2].SRPによって発生するSRPトルクを用いると,姿勢が受動的に太陽方向に追従(太陽指向)できることが知られています.ただし,この姿勢安定性は宇宙機の反射率等の表面特性に依存するため,表面特性によっては太陽指向姿勢から発散する不安定状態になります.そのため,高忠実なSRPを用いてその安定余裕の変化を解析することで,より詳細な安定性条件や平衡点の姿勢を明らかにすることを目指しています.
keywords: solar radiation pressure, BRDF
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