formation flying
宇宙広告衛星
複数の人工衛星は地上からどう見えるのか?人工的な星座を作り上げる宇宙広告というプロジェクトを想定し,複数ならではの複雑な自然運動に着目しています.
宇宙広告衛星とは?
宇宙広告は,衛星フォーメーションを光源として空に文字や図形のドット絵を描くエンターテインメントです.例えばオリンピックのようなイベントに合わせて,世界中でドット絵とそれに込めた思いを共有することができます.より多くの人に感動してもらうには,正確な形を作ることや,可視中の安定性が重要です.
地上から見たフォーメーションの安定性
複数の人工衛星がどう見えるか?,という問いを真剣に,数学的に考えることは案外難しいものです.どの座標系で,どんな変数で,どんな式で表すべきか,などを一歩ずつ考えていくことになります.また,どのような状況を想定するかによっても研究の手段が変わってきます.この研究では,人工的な星座を人の眼で直接見る,宇宙広告というプロジェクトを想定しています.人の眼で見るということは,数学的に表すときに多少の誤差が許され,近似的な方法が使えます.過去の研究では,主衛星に対する副衛星の相対的な見かけの近接運動を,独自の相対軌道要素を用いて線形的に定式化しました.その式を用いれば,地上から見えるフォーメーションの安定性の解析ができます.興味深いことに、どんなドット絵の形であっても,可視中に制御をしなくても安定する軌道要素の組み合わせがあることがわかっています.
ADRミッションを想定した近接運動の解析


能動的デブリ除去(Active Debris Removal, ADR)を想定した相対軌道設計の研究をしています.ADRミッションではサービス衛星によるデブリへのアプローチや捕獲の際に,宇宙機の近接運動での制御が必要になります.
Formation Keeping Control for Deorbiting Debris
レーザ搭載衛星によるスペースデブリ除去を想定した相対軌道設計の研究に取り組んでいます.軌道上でレーザ搭載衛星がスペースデブリへレーザパルスを照射し,アブレーション推力を発生させスペースデブリの軌道を降下させます.この際,スペースデブリがレーザ搭載衛星から離れてしまうため,レーザ搭載衛星は電気推進による推力を用いて追従し,レーザ照射が可能な相対軌道を維持する制御が必要となります.そのため,Isobeらは相対軌道要素(Relative Orbital Elements, ROE)を用いた相対軌道制御手法を提案しました.
Adaptive Relative Orbit Control
低軌道のADRでは,レーザ搭載衛星とデブリそれぞれに作用する大気抵抗の差(differential drag)があります.それによって両者の位置関係は想定と異なったものになります.大気抵抗を補償する制御を行えば良いのですが,大気密度には不確実性が伴います.またレーザーアブレーション推力の不確実性の考慮も必要です.そこで,両者の不確実性をスパースガウス過程回帰によって推定し,大気密度もしくはレーザーアブレーションの不確実性に対して適応的に相対軌道を制御する手法を提案しました(Isobe, S., et al., Journal of Space Safety Engineering).


