attitude–orbit coupling
高忠実な太陽輻射圧計算
太陽輻射圧(Solar Radiation Pressure, SRP)は,太陽光(光子,フォトン)が宇宙機表面に衝突,反射することによって発生する力です.従来は外乱として扱われてきましたが,ミッションの高度化によりSRPを積極的に活用する研究が多く行われるようになりました.例えば,ソーラーセイルと呼ばれる宇宙機は薄く大きな膜面を展開することで,SRPを主たる推進力として利用します.また,はやぶさ2のような深宇宙探査機もSRPを用いた姿勢安定化が行われています.
先に述べたようにSRPは光の衝突と反射によって発生する力であるため,反射分布によって力の方向と大きさが変わります.そのため,実際の物理現象に忠実な光の反射分布を用いてSRPを計算することが,SRPを活用した宇宙機の制御に重要になります.従来は単純な反射モデルに基づくSRPが用いられてきました.しかし,実際の反射現象は複雑で,上図左のような等方性反射だけでなく,材質によっては異方性反射特性(上図右)を持ちます.そのような反射モデルは存在するものの,それをSRPに適用すると解析的にSRP計算ができなくなる問題があります.そこで,実際の物理現象に近い反射モデルをSRPに適用し,さらにそのSRPの近似解析解を導出しました [1].これによりSRPを活用する宇宙機の制御則に陽に組み込むことが可能になり,高精度な軌道・姿勢制御へ寄与します.
2025年度にはコンピュータグラフィックス分野で用いられる反射モデルがまとめられたサーベイ論文をもとに,文献調査を行なった.定式化の扱いやすさと物理的根拠からAshikhmin-Shirleyモデルによる定式化を行い.球面ガウス関数の重ね合わせで一定の近似精度を持つ解析的な定式化を行った.また太陽電池セル以外にも宇宙機の設計やダイナミクスに関連するコンポーネントに関して他の研究者とミーティングを行なった.その結果,放熱板等の熱設計に関連するコンポーネントを選定し,研究協力者から借りて測定できる見込みがたった.ただし,測定は物品の準備や測定装置を保有するセンターの予約状況から,スケジュールに遅れ,太陽電池セルを主として,様々な波長や測定角度ステップに対して測定を行った.文献を調査し,ソーラーセイルの膜変形を定式化している論文に基づき太陽光圧による姿勢安定性解析を行った.膜の変化による静的な解析とそこからの時系列変化の両方を解析することで,従来の太陽光圧を用いた場合との差異を検証した
コンピュータグラフィックス分野で用いられるAshikhmin-Shirleyモデルによる太陽光圧の定式化を行い.球面ガウス関数の重ね合わせで一定の近似精度を持つ解析的な近似式を導出した.これにより異方性を持つ太陽光圧を解析的に計算することができ,宇宙物体の長期軌道・姿勢伝播といった計算コストの要する解析に対しても高速で実行することの基盤技術が得られた.ソーラーセイルの膜変形を定式化している論文に基づき太陽光圧による姿勢安定性解析を行った.ソーラーセイルの姿勢制御において,太陽輻射圧(Solar Radiation Pressure, SRP)の不確定性が大きな課題となっている.従来のSRPモデルはランバート拡散と完全鏡面反射という単純化された反射モデルに基づいているが,実際のセイル膜面は表面粗さや変形を持つため,この単純化では精度が不足する.本研究では,コンピュータグラフィックス分野で用いられる物理ベース反射モデルである Cook–Torrance モデルを適用し,より高忠実度な SRP モデルを構築した.
ライトカーブとSRPの定式化
太陽輻射圧(Solar Radiation Pressure, SRP)とライトカーブは共に太陽光の反射による現象であり,本質的には同じです.それらは宇宙機の姿勢,形状と表面の光学特性に依存するため,ダイナミクスに寄与する太陽輻射圧と観測量のライトカーブを直接関連づけることができます.これによりライトカーブによる状態推定の高精度化を目指します.






